最終段階で、実際に麻酔を打ってもらったのは分娩室に入ってから。
自分でベッドから手術台にうつるのは、陣痛が遠のいた時期を見計らって。
ごろん、と転がって移る。もう、見てくれも何もどうでもいいって感じだ。
準備が整う前にも、どんどん襲ってくる陣痛は呼吸法だけで乗り切ってみる。
助産婦さんが足りないみたい。私の下のほうを手当てしている人が、
「だれだれさんよんできて」
「それがダメだったらだれだれさん」
「え、だれだれさんもいないんですか?」
みたいな会話をしている。しばらくして一人やってきて、最後の麻酔を打ってくれた。4人くらいつくはずだったんだけど・・・・

麻酔はまだ効いておらず、すごい痛いんだけど、足を引っ掛けるところにベルトで止められ、「もう動けないんだ!?」と緊張は最高潮に。
「ご主人様の立会いは?」と聞かれ、もう見られたくないも何もわかんない状況で、
「本人に聞いてください!!!」と叫ぶ。
どうやら立会いすることにしたらしい。そうだよね、ここでしなかったらあとで何言われるかわからないもんね。
麻酔が効くまで、また深呼吸2回、吸っていきんでー、の呼吸法でいきむ。ここで頑張らなくちゃしょうがない、と必死。
だんだん、もう痛みはどうしようもないが、なんとなくいろんなものが出口付近にあるような気もする。おなかはすっきりしてきたし。
そうこうすると麻酔も効いてきた。
先生が到着。
ジィもやってきて手をにぎっていてくれる。その手を枕の下にいれ、私がいきむのをてつだってくれた。
またもや麻酔は効いていない気がして、「きききいてませーーん」と叫んで、最後に麻酔を追加。
これが効くのは15分後だよね…と考えていると、「今までの半分の力でいきんで!」と言われるが、それしかできないもん、って感じで。全力の力でいきむパワーは持ち合わせていない。
そろそろなんかが出てくる感じがして、いよいよ会陰切開か…などと、どこか冷静に待ち構えていたが、あとは痛いも何もなく、にゅるり、とまたの間から白い赤ちゃんが出てくるのが見えた。
あんまり泣かない。
「はあー」
みたいな、やさしい泣き声。
うれしいけれど、実感はそれでもわかないな。
なんか照れくさくもある。
「会陰切開はしませんでした」
と言われ、なんだかそれだけでも助けられたような気が楽になったような感じ。
そうこうしていると、胎盤をなにやら押し出されたのか取り出している気配。
私は卒業旅行でイギリスへ行っているので、残念だけどサイタイケツは協力できない。
何かやって、胸の上においてくれ、ジィにも見せていた。
うん、やっぱり実感はない。
奇形はないかしら…なんて冷静に見極めたくなるし、よくを出して顔立ちも気になる。
ジィには「でかしたな」
って言われた。そりゃそうだよ。
その後、いろいろ掃除をされている感覚と、拭かれているような感覚。
なんかアイスノンをのっけられたり、腹帯を巻き、ふんどしを締められている感覚もあり…
モデルのYちゃんから、大事なのは分娩台から降りるとき!
これを気をつけないと、骨盤開いちゃったままなんだって!
という恐ろしい前情報を吹き込まれていたので、それを思い出しつつ、脚を閉じながらゴロッとストレッチャーに移動する。
分娩予備室に戻ると、ママがいた。
パパやお姉ちゃんに連絡をしていたみたい。
しばらくすると、赤ちゃんがやってくる。
「いきむの上手でしたよー。赤ちゃんもママのいきみに合わせて上手に降りてきてくれたから、会陰切開しなくても大丈夫だったんですよ」
なんて言われる。ずっとダメ妊婦って思われている気がしていたので、褒められてヘンな気分だ。
赤ちゃんは小さくてしわくちゃ。私が腕枕する。軽いなあ。
一緒にビデオ撮影や写真撮影を行う。
急激に眠気が襲ってくる。でも、なんだかこのシチュエーションで「眠い」なんて言えない雰囲気。
この子は誰に似ているんだろう…なんて話しながら、ジィのパパって結論になる。
そうこうしていると、また新生児室に引き上げていくので、私はちょっと寝たい気分に。
ジィは急激な疲れと空腹で、ご飯を食べに行くらしい。
ママも一緒に行きたそうだったけど、ジィはひとりで気軽に行きたかったようで、ママは残る。
なんだか後陣痛が襲ってきた。
創造していたより、ひどい痛み。
これ、耐えられる気がしないよ・・・。
ジィ、早く帰ってきて!
泣き喚くとままがさすってくれるが、さすられるのもいらいらする。
そして、ジィが戻ってきたので、薬をもらいに行ってもらう。
おなかに血が残っていると痛みが増すとのことで、ぐんぐん押して押し出される。
痛い。
痛み止めも飲んだが、効くまで30分。そして30分経っても効かない。
また別の助産婦に坐薬を入れてもらう。
これも効くまで30分。
トイレに行きたいような気がしないでもなく、トイレへ行くと言うと、
「その状態では無理だと思いますよ。痛くないから導尿しましょう」
と言われる。痛くないなら…と、同意するけれど、
「ちょっと痛いですよー」なんて言われるのでだまされた気分。痛いんだったらイヤです、と言うと、
「痛みに本当に弱いですよね。お母さんになったら、お子さんが汚したときに、ちょっとぐらい痛いのはガマンして、って言うでしょ。我慢しなくっちゃ」
なんてたしなめられるけれど、痛くないって言うから屈辱の導尿にもOKしたのに。
いきんでいないのに、尿が出る音がする。けっこうたまっていたようで、それも痛みの原因だったようだ。
薬が効いてきた。
3階の用意ができたら移動と言われていたけど、なかなか声がかからず、晩御飯に。
きりがないと思ったのか、疲れきっていたジィはそこで帰った。
ちょっと寝てしまおうと思い、次に起きたら21時半。痛みも治まっている。歩いて3階へ移動した。
6人部屋だと思っていたら4人部屋だった。当たり前だけど、ちょっと前の検査入院のときの6人部屋よりゆったりしている。

なかなか寝られない。
明日は5時起き。
2時に起きてずっと起きていた。